腰椎すべり症・1


「腰椎すべり症」

腰椎すべり症

腰椎が前方へズレた状態です(図1参照)。

 

腰椎すべり症には、腰椎分離すべり症と腰椎変性すべり症があります。

 

その他、先天的形成異常(生まれつき骨の形が悪い)や悪性腫瘍、感染などで骨が壊されて起こる場合もあります。

 

 

「腰椎分離すべり症」


腰椎分離すべり症と腰椎分離症は別々の疾患として扱われています。

腰椎分離すべり症を起こす人は、子供の頃に腰椎分離症を起こしています。

 

「腰椎分離症」


腰椎分離症は、発育期の過度なスポーツが原因で起こる疲労骨折です。

*疲労骨折とは、同じ部分に、弱い力が何度も繰り返し加わる事で起こる骨折です。

 

一般の方で5%、スポーツ選手で30~40%の人に腰椎分離症が存在すると言われています。

腰椎分離症の発生機序

バッティングのような、腰をひねる動作を繰り返す事で、上関節突起と下関節突起がぶつかり、図2上の紫の部分に骨折が起こります。

 

また、ジャンプのような、腰を反らす動作を何回も繰り返す事で、図2下の紫の部分に骨折が起こります。

 

腰を反らしながら、ひねる動作の繰り返しが最も分離を起こす可能性があります。

 

左右両方が分離する場合と、片側だけ分離する場合があります。

 

腰椎分離症は、腰椎5番によく起こります。

 

子供が腰痛を訴えた時、腰椎分離症を疑う必要があります。

 

「腰椎分離症の症状」 


片側分離症

腰椎分離症では、骨折による骨膜からの腰痛が現れます。

また、椎間関節もぶつかり合うので、椎間関節からの腰痛と下肢痛も現れます。

 

しかし、あまり症状が現れず、分離していても気付かないでいる人も多いようです。

 

また、痛みを訴えて医療機関を受診しても、疲労骨折を起こした直後はレントゲンには写らない為、見逃される事が多いようです。

 

片側に腰椎分離症があると、分離側には前方へすべる力が加わります(図3の赤い矢印)。

 

すると、反対側の青い部分にねじれる力が発生します。この力が繰り返し加わると、骨膜からの腰痛が現れます(図3参照)。

 

いずれ、反対側の青い部分も分離する可能性があります。

 

腰椎分離症だけでは、骨がズレる事はありません。

 

椎間板に負担をかけ続けて年月が経つと、椎間板が薄くなります(変性)。

椎間板が薄くなると腰椎は不安定になり、前方へすべり出し、腰椎分離すべり症となります。

 

「腰椎分離すべり症の症状」


分離すべり症の脊柱管

腰椎分離すべり症では、椎間板にズレる力が加わる為(せんだん力)、主に椎間板からの腰痛が起こります。

 

腰椎分離症と同じように、ひどい症状が現れず、腰椎分離すべり症に気付かずにいる人も多いようです。

 

腰椎分離すべり症の場合、腰椎の後方部分がすべらずに残る為に脊柱管は広がります。

 

その為に脊柱管狭窄症を起こす事は少ないようです。

 

しかし、脊柱管はゆがめられるので、馬尾神経や神経根が圧迫される可能性はあります(図4参照)。

 

馬尾神経や神経根が刺激されると、両下肢にも痛みやしびれが現れます。

 

*馬尾神経(ばびしんけい)

脊髄は腰椎1番~2番の高さで終わり、そこから神経が馬のしっぽの様に背骨の中を下りてきます。

この神経の束を馬尾神経と呼びます(腰椎椎間板ヘルニア・2の図参照)。

 

腰椎すべり症・2