トリガーポイントによる大腿・膝・下腿の痛み


トリガーポイント=TP Ⅼ=腰椎 S=仙椎

 

図の✖印はTPの位置を示し、紫は関連痛の放散部を示す。

 

「大腿筋膜張筋トリガーポイント」

大腿筋膜張筋トリガーポイントによる大腿部の痛み

大腿筋膜張筋TPからの痛みは、股関節部から大腿前外側に放散し、膝まで及ぶ事もある(図1参照)。

 

痛みは股関節の運動により激しくなる。

 

また、患側が上の側臥位では、腸脛靭帯の伸張により痛みが誘発され、患側が下の側臥位ではTPの圧迫により痛みが引き起こされる。

 

起始:上前腸骨棘外面 停止:腸脛靭帯を介して脛骨外側顆

 

神経支配:上殿神経(L4~S2)

 

「縫工筋トリガーポイント」

縫工筋トリガーポイントによる大腿・膝の痛み

縫工筋TPからの痛みは、TPの存在する部の筋肉の走行に沿って、表層面にピリピリするような鋭い痛みを引き起こす(図2参照)。

 

縫工筋の下部TPは、内側広筋による関連痛領域と類似するが、内側広筋の関連痛は深部に放散する(図4参照)。

  

縫工筋の上部TPは外側大腿皮神経、下部TPは伏在神経の絞扼性神経障害を引き起こす事があり、大腿外側部に焼けるような痛み、ピリピリする痛み、知覚過敏や鈍麻、冷たく感じる等の知覚異常(上部TP)や膝内側に痛み(下部TP)を訴える。

 

起始:上前腸骨棘 

停止:脛骨粗面の内側に薄筋、半腱様筋の腱と共に鵞足となり付着

 

*薄くて細長い縫工筋は人体最長の筋である。

 

神経支配:大腿神経(L2,L3)

 

「大腿四頭筋トリガーポイント」

(大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋)

大腿四頭筋(大腿直筋・内側広筋・中間広筋・外側広筋)神経支配:大腿神経(L2~L4)

大腿直筋トリガーポイントによる大腿と膝の痛み

「大腿直筋TP」

股関節付近で下前腸骨棘のすぐ下に存在する大腿直筋TPによる痛みは、膝蓋骨周辺や膝関節深部に感じられ、大腿部前面に放散する(図3参照)。

 

夜間、股関節を曲げた側臥位で就寝中にうずくように痛む事も有る。

 

起始:下前腸骨棘、寛骨臼上縁 

停止:膝蓋骨と膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

 

 

内側広筋トリガーポイントによる大腿と膝の痛み

「内側広筋TP」

下部TPは膝の前内側、上部TPは大腿から膝前内側に深くうずくような痛みをもたらす(図4参照)。

 

起始:転子間線の遠位部から粗線内側唇 

停止:膝蓋骨と膝蓋靭帯を介して脛骨粗面、内側膝蓋支帯を介して脛骨粗面の内側

 

 

中間広筋トリガーポイントによる大腿の痛み

「中間広筋TP」

大腿直筋の深層にあり、触診が困難な中間広筋TPからの痛みは、大腿前面の全体に広がり、特に大腿中央部に強く現れる(図5参照)。

 

起始:大腿骨体の前面 

停止:膝蓋骨と膝蓋靭帯を介して脛骨粗面

 

 

 

 

外側広筋トリガーポイントによる大腿・膝・下腿の痛み

「外側広筋TP」

外側広筋は多くのTPを発生する。

 

外側広筋下部前方のTP1からの痛みは、大腿外側部に放散し、特に膝蓋骨外側縁に強く現れる(図6参照)。

 

外側広筋下部後方のTP2からの痛みは、膝外側に強く現れ、大腿外側や下腿外側にも広範囲に放散する(図6参照)。

 

 

 

 

 

外側広筋トリガーポイントによる大腿と膝の痛み

 

 

外側広筋中部後方のTP3からの痛みは、大腿後外側部全体と膝の後外側部に放散する(図7参照)。

外側広筋トリガーポイントによる股関節・大腿・膝の痛み

 外側広筋中部中央のTP4からの痛みは、大腿外側から腸骨稜まで放散し、膝外側から膝蓋骨の下部にまで広がる(図8参照)。

 

外側広筋近位端のTP5は、TP部に関連痛をもたらす(図8参照)。

 

起始:大転子、粗線外側唇

停止:膝蓋骨と膝蓋靭帯を介して脛骨粗面、外側膝蓋支帯を介して脛骨粗面の外側

 

 

 

 

「股関節内転筋群トリガーポイント」

(恥骨筋・短内転筋・長内転筋・大内転筋・薄筋)

恥骨筋トリガーポイントによる鼡径部と大腿の痛み

「恥骨筋TP」

恥骨筋TPからの痛みは、鼡径部の深部にうずくような痛みを生じ、その痛みは大腿の前上部に放散する(図9参照)。

 

痛みは内側にまで放散して坐骨結節まで広がる事もある。

 

起始:恥骨櫛

停止:小転子下方の恥骨筋線

 

神経支配:大腿神経(L2、L3)、閉鎖神経前枝(L2~L4)

 

長内転筋・短内転筋トリガーポイントによる大腿・膝・下腿の痛み

「短内転筋・長内転筋TP」

短・長内転筋TPからの痛みは、鼠径部外側の深部に強く現れ、大腿上部の前内側に放散する。

 

更に痛みは、膝の前上部に集中し、下腿の前面に放散する(図10参照)。

 

「短内転筋」

起始:恥骨下枝  

停止:粗線内側唇の上部1/3

 

神経支配:閉鎖神経の前枝と後枝(L2~L4)

 

「長内転筋」

起始:恥骨結節の下内側 

停止:粗線内側唇の中部1/3

 

神経支配:閉鎖神経の前枝(L2~L4)

 

大内転筋トリガーポイントによる骨盤内と大腿の痛み

「大内転筋TP」

一般的な大内転筋TP1からの痛みは、鼠径部の下内側の深部に強く現れ、大腿前内側面の下方まで放散する(図11参照)。

 

大内転筋TP2は、小骨盤内部に痛みを放散する(図11参照)。

 

起始:恥骨下枝、坐骨枝、坐骨結節

停止:深部(筋性の付着)は粗線内側唇、浅部(腱性の付着)は大腿骨内側上顆の内転筋結節

 

神経支配:深部は閉鎖神経(L2~L4)、浅部は脛骨神経(L4~S1)

 

薄筋トリガーポイントによる大腿内側の痛み

「薄筋TP」

薄筋TPからの痛みは、大腿内側の浅部にヒリヒリ刺すような痛みを引き起こす(図12参照)。

 

起始:恥骨下枝

停止:脛骨粗面の内側で縫工筋、半腱様筋の腱と共に鵞足となり付着

 

神経支配:閉鎖神経の前枝(L2、L3)

 

「ハムストリングトリガーポイント」

(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋)

大腿二頭筋長頭と短頭TPからの痛みは、大腿後部から下腿後部に放散し、特に膝の後部に強く現れる(図13参照)。

  

半腱・半膜様筋TPからの痛みは、殿溝部に強く現れ、大腿、膝、下腿の後内側部に放散する(図13参照)。

ハムストリングス・膝窩筋・外側側副靭帯トリガーポイントによる大腿・膝・下腿の痛み

 

「大腿二頭筋」

起始:長頭は坐骨結節、仙結節靭帯(半腱様筋と合流する) 短頭は粗線外側唇の中央1/3

停止:腓骨頭

 

神経支配:長頭は脛骨神経(L5~S2) 短頭は総腓骨神経(L5~S2)

 

「半腱様筋」

起始:坐骨結節、仙結節靭帯(大腿二頭筋と合流する)

停止:脛骨粗面の内側で縫工筋、薄筋の腱と共に鵞足となり付着

 

神経支配:脛骨神経(L5~S2)

 

「半膜様筋」

起始:坐骨結節

停止:脛骨内側顆、斜膝窩靭帯、膝窩筋の筋膜

 

神経支配:脛骨神経(L5~S2)

 

「膝窩筋トリガーポイント」

膝窩筋TPは膝後部に痛みを引き起こす(図13参照)。

 

起始:大腿骨の外側上顆 停止:脛骨上部後面

 

神経支配:脛骨神経(L4~S1)

 

「外側側副靭帯TP」

膝の外側上部に痛みを引き起こす事がある(図13下部参照)。