トリガーポイントによる腰痛・背部痛・殿部の痛みと腹痛


トリガーポイント=TP T=胸椎 Ⅼ=腰椎

 

図の✖印はTPの位置を示し、紫は関連痛の放散部を示す。

 

「菱形筋トリガーポイント」

菱形筋トリガーポイントによる上背部の痛み

 

菱形筋TPからの痛みは、肩甲骨内側縁に強く現れる。

 

痛みは肩甲骨上部(棘上窩)にも放散する。

 

安静時に、比較的表層部の痛みとして感じられる。

 

起始:「大菱形筋」第1~4胸椎の棘突起、「小菱形筋」第6,7頸椎の棘突起

停止:「大菱形筋」肩甲骨内側縁、「小菱形筋」肩甲棘上方の肩甲骨内側縁

 

神経支配:肩甲背神経(C4,C5)

 

「下後鋸筋トリガーポイント」

下後挙筋トリガーポイントによる下背部の痛み

 

 

下後鋸筋TPからの痛みは、下後鋸筋部とその周辺に現れる。

 

激しい痛みではないが、不快な痛みとして感じられる。

 

起始:第11~12胸椎及び第1~第2胸椎棘突起

停止:第9~12肋骨 

 

神経支配:肋間神経(T9~T12)

 

  

「胸腰部の脊柱起立筋トリガーポイント」

胸腸肋筋トリガーポイントによる背部と腹部の痛み

 「胸腸肋筋中部TP(図3・4のT6)」

痛みは上背部に広がる。

 

また胸壁外側部にも関連痛が現れる。

 

左側の痛みの場合、虚血性心疾患と誤診され易い。

 

「胸腸肋筋下部TP(図3・4のT11)」

痛みは肩甲骨部と腰部に放散する。

 

また側方にも放散して腹部にも関連痛が現れる。

 

「胸腰部の脊柱起立筋」

胸最長筋・胸腸肋筋・腰腸肋筋の走行図

「胸腸肋筋」

起始:第7~12肋骨角の内側 

停止:第1~6肋骨角の外側

 

「腰腸肋筋(胸部)」

起始:腸骨稜(脊柱起立筋腱膜を介する)

停止:第5~12肋骨角

 

「腰腸肋筋(腰部)」

起始:腸骨稜 

停止:L1~L4肋骨突起の外側、胸腰筋膜

 

「胸最長筋(胸部)」

起始:腰椎、仙椎、腸骨(脊柱起立筋腱膜を介する) 

停止:全胸椎の横突起、第5~12肋骨

 

「胸最長筋(腰部)」

起始:上後腸骨棘 停止:腰椎の副突起と肋骨突起の内側

 

神経支配:それぞれの分節の脊髄神経後枝

 

腰腸肋筋・胸最長筋トリガーポイントによるお尻の痛み(殿部痛)

「腰腸肋筋TP(図4・5の左図L1)」

痛みは下方へ向かい殿部に集中する。

 

胸最長筋(胸郭下部)TP(図4・5のT10.11)

痛みは下方へ放散し、殿部下部に強く現れる。

 

関連痛の放散部が離れているため原因TPが見逃され易い。

 

「胸最長筋(腰部)TP(図4・5の右図のL1)

痛みは腰部から腸骨稜部に放散する。

 

「胸腰部の横突棘筋トリガーポイント」

横突棘筋は、半棘筋、多裂筋、回旋筋からなる(図6参照)。

 

最表層の胸半棘筋TPの関連痛パターンは、同じ高さにある最長筋の関連痛パターンと一致する。

多裂筋トリガーポイントによる背部の痛み 半棘筋・多裂筋・回旋筋の走行図

 

「多裂筋・回旋筋TP」

深層の多裂筋と最深部の回旋筋TPからの痛みは、TPに隣接した棘突起部とその周辺に現れ、棘突起部が触診に対して過敏となる(図6参照)。

 

「回旋筋」

起始:腰椎の乳頭突起、胸椎の横突起、頚椎の下関節突起

停止:1~2上位椎骨の棘突起基部

 

「多裂筋」

起始:仙骨後面、腰椎の乳頭突起と副突起、胸椎の横突起、第7~4頚椎の下関節突起

停止:3~4上位椎骨の棘突起

 

「胸半棘筋」

起始:第6~12胸椎の横突起

停止:第6頚椎~第4胸椎の棘突起(5個以上の椎骨を飛び越える)

 

神経支配:それぞれの分節の脊髄神経後枝

 

多裂筋トリガーポイントによる背部と腹部の痛み

 

L1~S1の高さに位置する多裂筋TPは、腹部に痛みを放散する事があり、内臓疾患と誤診され易い。

 

S1の高さに位置する多裂筋TPからの痛みは、尾骨に放散し、尾骨部が触診に対して過敏となる。

 

 

 

 

「腹筋群」

腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋の走行図

「腹直筋」

起始:第5~7肋軟骨、剣状突起

停止:恥骨結合前面、恥骨結節上縁

 

「外腹斜筋」

起始:第5~12肋骨外面 

停止:腸骨稜外唇、腹直筋鞘前葉、白線、鼡径靭帯

 

「内腹斜筋」

起始:胸腰筋膜深葉、腸骨稜中間線、上前腸骨棘、鼠経靭帯外側1/2

停止:第10~12肋骨の下縁、腹直筋鞘前・後葉、白線

 

「腹横筋」

起始:第6~12肋軟骨の内面、胸腰筋膜深葉、腸骨稜内唇、鼠径靭帯外側

停止:腹直筋鞘後葉、白線

 

神経支配:「腹直筋と外腹斜筋」肋間神経(T5~T11)、肋下神経(T12)、「内腹斜筋と腹横筋」肋間神経(T10~T11)、肋下神経(T12)、腸骨下腹神経と腸骨鼡径神経(L1)

 

「外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋トリガーポイント」

外腹斜筋トリガーポイントによる腹痛・胸痛・吐き気

「外腹斜筋上部TP」

胸やけ、胸痛、つかえ感など、逆流性食道炎に似た症状を引き起こす事が多い(図9)。

 

「吐き気を引き起こすTP」

TPは第12肋骨の肋骨角部またはその下部にあり、右左どちらにも現れる(図9)。

 

このTPを圧迫すると、ゲップ、吐き気、嘔吐をもよおす。

 

腹筋のトリガーポイントによる頻尿・尿閉・下痢・腹痛

「腹部外側壁下部(外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋)TP」

痛みは鼠径部、精巣、陰唇に現れ、腹部にも指を広げた形状に放散する(図10左図)。

 

「恥骨上縁の腹直筋TPまたは鼠経靭帯外側半分の内腹斜筋TP」

頻尿、尿閉、鼠径部の痛みを引き起こす(図10左図)。

 

下腹部外側の浅層筋組織TPは、下痢の原因となる事が有る(図10右図)。

 

「腹直筋トリガーポイント」

腹直筋上部と下部トリガーポイントによる背中の痛みと腰痛

「上部腹直筋TP」

左右どちらのTPも、中背部の両側に水平に横切る痛みを放散させる(図11)。

 

上部TPが左側に存在する時は、心臓前部に痛みが現れる事が有る。

 

剣状突起部の傍ら(特に左側)のTPは、腹部膨満感、胸やけ、消化不良、吐き気や嘔吐を起こす事が有る。

痛みは上腹部の両側の肋骨縁に沿って放散する。

 

「下部腹直筋TP」

仙腸関節から腸骨稜にかけて両側性に痛みが放散する(図11)。

また下部腹直筋TPは下痢を引き起こす事も有る。

 

「臍部腹直筋TP」

臍(へそ)の外側縁のTPは、腹部の痙攣や疝痛を引き起こす事が有る。

 

臍近位の腹直筋外側TPは、広範な腹痛を引き起こし、動作により悪化する。

 

腹直筋外縁(モンロー点)トリガーポイントによる腹痛(下腹部痛)

 

臍と上前腸骨棘を結ぶ線(リヒター・モンロー線)上で、中間部のモンロー点(右腹直筋外側縁)のTPは、右下腹部1/4区画に鋭い痛みを引き起こし、虫垂炎に似た症状を引き起こす(図12)  。 

 

腹直筋トリガーポイントによる月経困難と下腹部の痛み

 

「下部腹直筋TP」

臍と恥骨結合の中間部の下部腹直筋TPは、月経困難を引き起こす事が有る(図13)。

 

 

 

 

 

 

 

 

錐体筋トリガーポイントによる腹部(下腹部)の痛み

「錐体筋TP」

臍と恥骨との間の正中付近に痛みが生じる(図14)。

 

「錐体筋」

起始:恥骨(腹直筋停止部の前) 

停止:白線

 

 神経支配:肋下神経(T12)

 

 

 

「その他、体幹上部に痛みをもたらすトリガーポイント(図15)」

肩甲挙筋 斜角筋 棘上筋 棘下筋 広背筋 肩甲下筋 上後鋸筋 前鋸筋トリガーポイントによる体幹の痛み

 

肩甲挙筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図1参照)

 

斜角筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図2参照)

 

棘上筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図3参照)

 

棘下筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図4参照)

 

 

 

広背筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図8参照)

 

 

 

 

肩甲下筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図9参照)

 

上後鋸筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図10参照)

 

 

 

前鋸筋TP

体幹上部と上肢の痛み・1(図11参照)

 

僧帽筋TP

頭痛と顔の痛み(図1参照)

 

後頚筋(頭半棘筋、頚半棘筋、多裂筋)

頭痛と顔の痛み(図4参照)

 

「その他、体幹下部に痛みをもたらすトリガーポイント(図16)」

体幹下部の痛みをもたらすトリガーポイント

 

 

 

腰方形筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図1参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腸腰筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図2参照)

 

 

 

 

 

 

 

大殿筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図3参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中殿筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図4参照)

 

 

 

 

 

 

 

小殿筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図5参照)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梨状筋TP

体幹下部と下肢の痛み(図6参照)