トリガーポイントによる腰痛・殿部痛・下肢の痛み


トリガーポイント=TP T=胸椎 Ⅼ=腰椎 S=仙椎

 

図の✖印はTPの位置を示し、紫は関連痛の放散部を示す。

 

「腰方形筋トリガーポイント」

腰方形筋TPは、外側の浅層部に2つと内側の深層部に2つのTPがある。

 

「腰方形筋(浅層部)TP」(図1参照)

 TP1:痛みは腸骨稜に沿って現れ、下腹部や鼠径部に広がる事もある。

 

腰方形筋トリガーポイントによる腰・殿部・鼠径部の痛み

TP2:痛みは大転子部から大腿上部外側面に広がる。

 また、大転子部が過敏となり患部を下にした側臥位が困難となる事も有る。

 

「腰方形筋(深層部)TP」(図1参照)

TP1:痛みは仙腸関節部に強く現れる。

 

しばしば、仙骨部にも放散する。

 

TP2:痛みは下殿部に現れる。

また、咳やくしゃみにより激しい痛みを引き起こす事が有る。

 

腰方形筋は3つの筋線維群により形成される。

①腸肋間線維(図1下右図の赤い線)浅層、外側に位置する。

起始:腸骨稜、腸腰靭帯 停止:第12肋骨内側半分

 

②腰肋間線維(図1下右図の青い線)深層、内側に位置する。

起始:L1~L4肋骨突起 停止:第12肋骨下縁

 

③腸腰間線維(図1下右図のの線)中間層、内側に位置する。

起始:腸骨稜、腸腰靭帯 停止:L1~L4肋骨突起

 

神経支配:肋下神経(T12)、腰神経叢からの枝(L1~L4)

 

「腸腰筋トリガーポイント」

腸腰筋TPからの痛みは、腰椎に沿ってTP側に垂直に現れ、下方では仙腸関節から上殿部に広がる事もある。

 

前面では、鼠径部と大腿前内側部に関連痛が現れる。

 

腸腰筋TPの触診による関連痛は主に背部に放散するが、腸腰筋の下部付着部(小転子近位)TPの触診では関連痛が大腿前方部にも放散する事がある。

 

腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)トリガーポイントによる腰・鼠径部・大腿部の痛み

起始

「大腰筋(浅頭)」腰椎の椎間板、椎間板に接する椎体辺縁、椎体上下縁を結ぶ線維性アーチ(図2右の緑色、腰動静脈が通る) 

「大腰筋(深頭)」肋骨突起前面内側半分 

「腸骨筋」腸骨稜の上縁(内唇)、腸骨窩の上2/3、仙骨の上外側部、下前腸骨棘 

「小腰筋」T12とL1椎体と椎間板

停止

「大腰筋」大腿骨小転子

「腸骨筋」大腿骨小転子下方

「小腰筋」腸恥隆起

 

神経支配:「大腰筋」腰神経叢の枝(L1~L4)、「腸骨筋」大腿神経と腰神経叢の枝(L2~L4)、「小腰筋」腰神経叢の枝(L1)

 

*腸腰筋TPは筋裂孔部での大腿神経、外側大腿皮神経の絞扼の原因となる(鼠径部での絞扼性神経障害参照)。

 

「大殿筋トリガーポイント」

「大殿筋TP1」

仙骨外縁のTPからの痛みは、仙腸関節部から殿裂と殿溝に沿って放散し、後大腿部上方にも波及する(図3参照)。

  

大殿筋トリガーポイントによる殿部から大腿部の痛み

 「大殿筋TP2」

発生頻度の高い、坐骨結節のやや頭側のTPからの痛みは、殿部全体に放散し、深部にも波及する。

 

痛みは特に、仙骨下部、腸骨稜外側下部、坐骨結節部に強く現れる(図3参照)。

 

「大殿筋TP3]

大殿筋の最も内側下部のTPからの痛みは、TP部から尾骨部に放散する(図3参照)。

 

起始

「大殿筋浅層」腸骨稜、上後腸骨棘、外側仙骨稜、尾骨、胸腰筋膜

「大殿筋深層」後殿筋線の後方、仙結節靭帯、中殿筋の筋膜

停止

「大殿筋浅層」腸脛靭帯

「大殿筋深層」上部:腸脛靭帯、下部:大腿骨の殿筋粗面(図3参照)

 

神経支配:下殿神経(L5~S2)

 

「中殿筋トリガーポイント」

中殿筋トリガーポイントによる腰・殿部・大腿部の痛み

「中殿筋TP1」

中殿筋後方上縁のTPからの痛みは、腸骨稜の後上部から仙腸関節部と仙骨外側を経て殿部に放散する(図4参照)。

 

「中殿筋TP2]

中殿筋中央上縁のTPからの痛みは、中殿部から大腿後外側部の上部に放散する(図4参照)。

 

「中殿筋TP3]

稀に見られる中殿筋前部上縁のTPからの痛みは、腸骨稜に沿って腰部最下部に広がり、特に仙骨部に強く現れる(図4参照)。

 

起始:腸骨翼の外面(前殿筋線と後殿筋線の間)

停止:大腿骨大転子の先端と外側面

*中殿筋の前方からの線維は表層へ、後方からの線維は深層へ入り交差する。

 

神経支配:上殿神経(L4,L5,S1)

 

「小殿筋トリガーポイント」

小殿筋トリガーポイントによる殿部・大腿部・下腿部の痛み

「小殿筋前方TP」

痛みは殿部下外側部、大腿と膝の外側面、下腿外側に放散するが、足首を越える事はほとんどない。

 

「小殿筋後方TP」

痛みは殿部全体に広がり(特に下内側面に集中する)、大腿部後外側から下腿後外側の近位1/3にまで放散する。

 

*下肢に症状が現れるため、坐骨神経痛と誤診されやすく、TPも痛みの放散区域と離れた場所にあり見逃されやすい。

 

起始:腸骨翼の外面(前殿筋線と中殿筋線の間)

停止:大腿骨大転子の前上面

 

神経支配:上殿神経(L4,L5,S1)

 

「梨状筋とその他の短外旋筋トリガーポイント」

梨状筋とその他の短外旋筋(上双子筋、内閉鎖筋、下双子筋、大腿方形筋、外閉鎖筋)は総称して深層外旋六筋と呼ばれている。

梨状筋(深層外旋六筋)トリガーポイントによる殿部から大腿部の痛み

梨状筋TPとその他の短外旋筋TPの関連痛は識別が困難である。

 

梨状筋TP1とTP2の関連痛パターンは類似する。

 

梨状筋TPからの痛みは、仙腸関節部と股関節後部に強く現れ、殿部全体から大腿後部2/3にまで放散する。

 

梨状筋TPは梨状筋症候群の原因となる事がある。

 

「梨状筋」

起始:仙骨前面で第2~4前仙骨孔の間とその外側 停止:大腿骨大転子の先端内側面

 

「内閉鎖筋」

起始:閉鎖孔のまわりの内面、閉鎖膜の内面 停止:大腿骨大転子の転子窩

  

「外閉鎖筋」

起始:閉鎖孔のまわりの外面、閉鎖膜の外面 停止:大腿骨大転子の転子窩

 

「上双子筋」

起始:坐骨棘 停止:大腿骨大転子の転子窩

 

「下双子筋」

起始:坐骨結節 停止:大腿骨大転子の転子窩

 

神経支配:「梨状筋」仙骨神経叢からの枝(L5~S2) 「内閉鎖筋・上双子筋・下双子筋・大腿方形筋」仙骨神経叢からの枝(L5,S1) 「外閉鎖筋」閉鎖神経(L3、L4)