痛みについて・2

「関連痛」


 体に障害のある場所とは関係のない離れた場所に痛みを感じる事がよくあります。

 

これを関連痛と言います。

 

例えば、心臓が悪い時に左肩や左腕の内側が痛んだり、腎臓が悪い時に腰が痛んだり、また、殿部の筋肉の障害で足が痛んだりする事があります(坐骨神経痛のように神経が圧迫されて足に痛みが出る神経根症とは異なる)。

 

この現象は、樹木に例えると、小さな枝が合流して段々と大きな枝となり最終的には太い幹になるように、神経も体の末端から集まって段々と合流して太い束となり脳に届きます。

 

脳はこの神経の合流時に、殿部から来る痛みの情報を足から来た痛みと錯覚したり、また、心臓から来る痛みの情報を左肩から来た痛みと錯覚してしまう為に関連痛が起こるようです。

 

もし、足に痛みがありMRI等の画像診断で椎間板ヘルニアと診断されても、その足の痛みが関連痛なのか、ヘルニアによる神経圧迫の痛みなのかを見極める必要があります(関連痛は細い神経が伝え、ハッキリとしない深部の痛みですが、神経の圧迫による痛みは神経に沿ったハッキリとした鋭い電撃痛で、筋力低下、知覚異常、知覚低下などを伴うと言われています)。

 

また、腰や肩に痛みがある場合でも内臓からの関連痛も考慮する必要があります。

 

関連痛が長く続くと、異常が無いのに痛みだけを感じていた場所も悪くなります。

 

そして、その場所からも新たな関連痛が発生します。

 

このようにして悪い場所が広がり悪循環になる事もあります。

 

「痛みを緩和するシステム」


「ゲートコントロール説」

触った感覚(触覚)を伝える神経は、痛みを感じる神経よりも遥かに太い神経です。

 

痛みがある時に、この太い神経を刺激すると、太い神経が優先され、痛みを感じる細い神経が抑制されます。

 

これをゲートコントロール理論と言います。

 

さすったり、貼り薬を貼って皮膚を刺激すると痛みが楽になるのはこの作用もあるようです。

 

*触覚を伝える神経はAβ線維と呼ばれています。

 

「広汎性侵害抑制調節(DNIC)」

体のある部分が痛む時に、他の場所を叩く等して、痛みを紛らわした経験はないでしょうか?

 

これは痛みで痛みを抑える現象です。

 

日常では、もともと腰痛を持っている人が、他の場所をケガした時に腰の痛みを忘れていた。

 

また、肩が痛くて治療を始めた人が、痛みが改善されてきた頃、肩の痛みで隠されていた他の場所の痛みが現れる等です。

 

この現象は、緊急性の高い場所の痛みが優先的に伝わり、他の場所の痛みは抑制される仕組みです。

 

これを広汎性侵害抑制調節(DNIC)と言います。

            

「脳内麻薬」

人は極限状態に達した時に、苦痛を快感に変える仕組みを持っているようです。

 

苦しいマラソンで限界を超えた時に、気分がハイになり気持ちが良くなる(ランナーズハイ)。

 

雪山で遭難して救助された瞬間、それまで全く感じていなかった痛みが出現して骨折が見つかる。

 

水に溺れて、もがき苦しんでいるうちに限界を超え、急に気持ちが良くなり苦しさがなくなる等。

 

この時、脳内では脳内麻薬(βエンドルフィン等)が分泌されているようです。

 

人は極限状態に達した時、自分自身で麻薬を作り出す能力を神様から授かっているようですね。

 

「交感神経による痛みの抑制」

興奮や緊張状態の時には交感神経の働きにより、アドレナリンやコルチゾン等のホルモンが副腎(腎臓の上に帽子のように乗っている臓器)から分泌されて痛みが抑制されます。

 

何かに熱中している時や怒っている時は痛みをあまり感じません。

 

「プラシーボ効果」

思い込みの力、プラシーボ効果という言葉があります。

 

偽薬でも薬だと思い込んで飲むと、痛みが消えたり、他の症状も改善されたりします。

 

逆に疑いながら治療を受けると良くなる治療でも効果が出ない事もあるようです。「信じる者は救われる」という言葉も一理ありそうですね。

 

その他、ノルアドレナリンとセロトニン(下降性疼痛抑制系)、ドーパミン、ギャバ等の神経伝達物質も痛みを抑制する作用があるようです。

                                  

「痛みと治療」


痛みは炎症と共に現れます。

 

炎症が強いと痛みもそれだけ強くなります。

 

痛みがひどい場合は、痛みの悪循環を避ける為に消炎鎮痛剤(NSAIDs)も必要でしょう。

 

しかし、炎症は体を治す為の重要な反応です。

 

消炎鎮痛剤は悪い所を治すのではなく、体を治す働きを遅らせて痛みを抑えているようです(炎症反応を遅らせる)。

 

痛みを感じないと、無理な行動や姿勢に気付かず、痛めている場所に負担をかけてしまう恐れがあります。

 

また、薬には副作用もあります。

 

痛みがひどくない場合等は、なるべく薬に頼らずに上手に使いましょう。

 

通常は、カイロプラクティックや鍼治療を受けると、段々と痛みが消失していきますが、痛めた直後(急性期)等に治療を受けると稀に痛みが増す事があります。

 

*鈍くなっていた神経が治療により回復する過程でも痛みが増してくる事があります(瞑眩)。

 

この治療は、自然治癒力を高める治療です。

 

体を治す働きが高まると、炎症は一時ひどくなりますが、早く治ります(例えば、自然治癒力の高い子供は、症状が急激に出て、早く治りますが、自然治癒力の低い高齢の方は、症状がじわじわと出て、なかなか治りません)。

 

ただ、痛みは誰でも嫌なものです。

 

その時の状況により治療法を工夫する必要があります。