絞扼性神経障害とは、脊髄を出て、手足などの末梢に伸びる神経(末梢神経)が、骨や靭帯、筋肉(筋膜)で作られた隙間(トンネル)を通る時に締め付けられて起こる神経の障害です。
絞扼(締め付けられる)部より先(末梢)の神経が障害され、痛み、シビレ、筋力の低下等の症状が現れます。
神経の絞扼される場所は、各神経でほぼ決まっています。
図1、2は、末梢神経のおおよその分布範囲を示しています。
●腋窩(えきか)神経の絞扼性神経障害
・四辺形間隙(しへんけいかんげき)症候群(外側腋窩隙症候群)
●橈骨(とうこつ)神経の絞扼性神経障害
●筋皮(きんぴ)神経の絞扼性神経障害
●正中神経の絞扼性神経障害
●尺骨神経の絞扼性神経障害
●内側前腕皮神経の絞扼性神経障害
・胸郭出口症候群(前腕から手の小指側に痛み・シビレが現れる事が多いが、上肢全体に知覚障害が現れる事もある)
●●殿皮神経の絞扼性神経障害
●外側大腿皮神経の絞扼性神経障害
・絞扼性外側大腿皮神経障害知覚異常性大腿通(メラルジア・パレステジア)
●下殿皮神経・●後大腿皮神経の絞扼性神経障害
●大腿神経の絞扼性神経障害
●坐骨神経の絞扼性神経障害
・モートン病(第3-4指間の痛み、シビレ)
各神経根(脊髄から出て背骨の各出口(椎間孔)を通る神経)のおおよその手足への分布領域を図3に示しています。
*Cは頚椎、Tは胸椎、Lは腰椎、Sは仙椎を表します。
頚椎症や頚椎椎間板ヘルニア等の頚椎の障害では、痛み・シビレは手に現れます。
例:第5頚椎と第6頚椎の間から出る神経(C6神経根)の障害では前腕から手の親指側に痛み・シビレが現れます(図3参照)。
腰椎椎間板ヘルニアや腰椎症等の腰椎の障害では、痛み・シビレは足に現れます。
例:第4腰椎と第5腰椎の間から出る神経(L5神経根)の障害では下腿の前外側から足背に痛み・シビレが現れます(図3参照)。
*椎間板ヘルニアによる末梢神経の圧迫は一般に、絞扼性神経障害には分類されていませんが、神経が圧迫(絞扼)されるという状態は同じです。